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B.D.S. Opera Posthuma : [1]

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16、17世紀を通じて、オランダは他のヨーロッパ諸国に比べ信仰上の自由を認め、宗教的寛容を政策としていた。しかし、17世紀後半になると対スペイン独立戦争に大きな役割を果たしたカルヴァン派が宗教界、政界に巨大な勢力を占めこのこの寛容な宗教政策をおびやかし始め、他の宗派への迫害が行われるようになった。信仰の自由を求め、異端審問によるきびしい迫害が行われていたスペイン・ポルトガルからフランスのナントを経てオランダのアムステルダムに逃れて来たユダヤ人の家系をもつスピノザBaruch de Spinoza(1632-77)が著した「神学政治論」はこのような社会情勢のもとで出版された。「神学政治論」はこの迫害に対抗するために著されたもので、神学と哲学、信仰と理性の分離をテーマとし、聖書解釈の歴史的方法を確立、近代聖書学の基礎を築いた。また、ホッブスの影響を受けたといわれている政治論では神学と国家主権の関連を論じつつ、思考と言論の自由が国家存立上の最大の条件であることを強調した。初版《神学政治論》Tractatus theologico-politicusは1670年初頭にアムステルダムのリューヴェルツ書店から出版されたが、スピノザは彼自身とその著作への攻撃を予想して、住所をフォールブルフからハーグへ移転するとともに、発行者をドイツのヘンブルグ、キューンラート書店と偽り、匿名で出版した。尚、この出版の反響は大きく、ほとんどの読者はこの書に対する批判者であったが、刊行後1年間に初版の4刷まで刊行されたほどである。しかし、刊行の4年後の1674年ついにオランダ法院は本書を禁書とした。スピノザは、無神論者、瀆神論者という非難の嵐の中で、「神学政治論」を出版するために一時中断していた彼のもう一つの主著である「エチカ(倫理学)」の完成に没頭していた。「エチカ」は幾何学的形式によって書かれた作品で、小数の定義と公理に始まり、整然かつ大胆に神と世界そして人間の精神の本質について述べ、彼の形而上学、認識論、感情論、倫理学を一つにまとめたものである。スピノザはようやく完成した「エチカ」を出版するため、1675年アムステルダムに行き、適当な出版者を探したが、スピノザとその著書に対する非難は未だ続いており、この事態がおさまるまで出版を延期せざるを得なかった。そして「エチカ」は結局彼の生存中に出版することができず、他の原稿とともに《遺稿集》Opera Posthumaの中に収められ1677年友人たちの手によってアムステルダムのリューウェルツ書店から出版された。当館所蔵は四折判、べラム装幀の初版本で、本文中に種々の木版挿画があり、2枚目の遊び紙には所有者の手書きの注釈がある。収録されている作品は「エチカ」のほかに、ヘブライ語文法について書かれた“Compendium Grammatices linguae Hebraeae”や自己の作品の要点について新しい陳述を行った“Tractatus Politicus”と“Tractatus de intellectus emendatione…”“Epistolae doctorum quorundam Virorum et auctoris Rosponsiones”がある。このようにスピノザは“無神論者”として糾弾され、その時代の哲学の主流からはずれた孤高の哲学者として最後まで歩むことになった。自己の属したユダヤ人社会と絶縁し、多数の言語を自由に使いこなし、結局どの国家にも同化することのなかったスピノザは、自由で、中正で、孤独であった。そして彼が主張し続けたこの自由と孤独の中で、合理的に証明しえると信じた一つの哲学を、様々な誹謗と中傷の中で純粋な理性によって構築しようとつとめたのである。スピノザの死と「遺稿集」出版後の約100年は、彼の名は哲学その他の研究の中で殆んどとりあげられることなくすぎ、レッシングやゲーテがその思想に再び光をあてる以前に本格的な研究の対象とされることは少なかった。ただイギリスとフランスの思想家、ヒュームとヴォルテールなどごく一部の思想家がこの孤独なオランダの哲学者に言及しているにすぎない。(神奈川大学貴重書目録『古典逍遥』より)

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発行日タイトル著者
1677 B.D.S. Opera Posthuma / [ed. by J. Jellis ; his preface originally written in Dutch, tr. by L. Meyer].. Spinoza, Baruch

 

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